○田島(一)委員
民主党の田島一成でございます。
保利委員の後、引き続き、一時間ちょうだいをいたしましたので、質問させていただきたいと思います。
冒頭、急な通告で、大臣以下皆様には大変御迷惑をおかけいたしますけれども、先ほど保利委員からも質問があったように、今回のこの未履修をめぐっての問題は、本当に全国を大きく揺るがしている、そんな実態が明るみに出てまいりました。埼玉県のある私立高校は、六泊七日の修学旅行を世界史Bに換算していたという信じられない実態も明るみに出てまいりました。世界一周でもしに行ったのかなと思ったら、オーストラリアに修学旅行に行って、これで世界史Bの単位が取れたんだと。本当に、常識をはるかに超えた、余りにごまかしが横行しているようなこの実態が明るみに出てまいりました。
恐らく大臣も、きのうの委員会の答弁等ででもお答えいただいたとおり、その責任の重さは随分認識をいただいていると思うわけでありますけれども、全国の高校における未履修の実態調査、もうこれは最終的な数字がほぼ出てきたやに聞いておるわけですけれども、この最終的な実態の報告というものをお示しいただけませんでしょうか。
○伊吹国務大臣
それでは、お答えを申し上げます。
既に理事会にけさ提出をいたしておりますので、御党の理事から御入手かもわかりませんが、広く国民の皆さんに知っていただくために、先生の御質問にお答えしたいと思います。
まず、これは既に昨日御報告をいたしましたように、国立は十五校で、未履修はございません。それから、公立は四千四十五校で、うち三百十四校が未履修校がございます。それから、私立は千三百四十八校ございまして、二校だけがまだ回答が来ておりませんが、千三百四十六校のうち二百二十六校の未履修校がございます。ですから、総計いたしますと、高等学校は五千四百八校ですが、私立で二校返答が来ておりませんので、五千四百六校、九九・九%まで調査が終わりました。このうち、今申し上げました、未履修の学校の合計は五百四十校でございます。校数で見ますと、パーセンテージとして、残念ながら一〇%、一割にこういうことが起こっているということです。
次に、生徒の数で申し上げますと、三年生の生徒は、国立で二千八百二十六人、これは一人も未履修の生徒はおりません。それから、公立が八十一万二千七百六十七人、未履修の生徒数は五万八百二十七人です。それから、私立は三十四万六千三百三十二人の生徒がおりまして、既に調査をいたしました対象校の生徒は三十四万五千八百三十二人です。このうち、未履修の生徒が三万二千九百十六人。合計をいたしますと、若干の、まだ調査対象になっていない生徒がおりますが、百十六万余の高校三年生の中で、未履修の生徒の数は八万三千七百四十三人となっております。この八万三千七百四十三人のうち、七十時間以内、つまり二単位以内の未履修の生徒が六万一千三百五十二人、残りが、七十時間から百四十時間以内の生徒が一万七千八百三十七人、百四十時間を超える生徒が四千五百五十四人ということになっております。
○田島(一)委員
ありがとうございます。
これがほぼ最終報告、私立の二校だけがまだだということですけれども、ほぼ最終報告というふうに受けとめさせてもらってよろしいでしょうか。
○伊吹国務大臣
これは、数字が違って、後ほどまたしかられると困りますが、高等学校がすべて良心に従って教育委員会あるいは知事部局にしっかりとお答えをいただいているという前提であれば、これで間違いはないと思います。
〔委員長退席、斉藤(斗)委員長代理着席〕
○田島(一)委員
性善説に立たなければなかなか難しいというお話、これも上意下達でこれまでの文部科学行政を行ってこられた結果ですから、大臣のお立場からすれば、当然信じた上ででしか数字は出てこない、もちろんのことだというふうに思います。
その中で、大臣も、今週中には今回のこの未履修問題に対して国としての対応策を示していくことを検討していくというふうにお考えをおっしゃったというふうに記憶しているんですけれども、この基本的な考え方、言ってみれば、どのように対応していこうというふうにお考えなのか、基本的なお考えというのをぜひ聞かせていただきたいのと、あと、もう既に補習を始めている学校もありますし、文部科学省としての見解や対応を待っている現場もあります、いつごろこれを発表される予定なのかもあわせてお答えいただけませんか。
○伊吹国務大臣
再三申し上げておりますように、百十六万余の高校三年生のうち、未履修の生徒が八万三千七百四十三人と申し上げました。この人たちは、私が高校生時代のことを思い出しても、先生が教えてくれているものが学習指導要領に反しているカリキュラムを組んでおられるのかどうなのかなんて、田島先生もそうでしょうけれども、考えても見ずに、このとおり勉強すればいいんだと思ってやっておったと思いますね。ですから、しかし、あれはどうも校長先生以下のカリキュラムの組み方が、必修を外して受験に有利なところを深掘りして教えているという、他校の人に比べたらずるいことをやっているなんて思いも寄らないわけですから、これはやはり被害者と考えてやらねばいけないですね。
それから同時に、では、残りの約百八万の、学習指導要領どおりまじめにやっていた学生は、受験科目についてはややハンディを背負って同じ大学を受けなければいけないわけですから、この人もやはり被害者と考えてあげる。全学生が被害者なんですね。
ですから、それで今、受験期を前にして非常にやはり精神的にも不安定な時期ですから、私はもう今週中に結論を出して、そして、今週中に結論を出すといっても、これは御承知のように、文部科学省が直接、高等学校に対する設置権もなければ人事権も何もないわけですから、指導したり調査をする権限だけがあるわけです。先生は性善説だとおっしゃったけれども、調査をした結果について、間違っているからペナルティーを科す権限すら私にはないわけですから。ですから、一応こういう基準でやってくださいと。しかし、指導要領に反した場合は卒業させられないわけですから。ですから、こういう基準でやっていただければ卒業できるという指導要領の例外的措置を通達しないといけないんですね。だから、まず方針を決めて、議院内閣制でございますから与党内の調整もいたしますし、もちろん、ある程度の方向が決まれば民主党やその他の野党にも、これは教育のことですから、私はお示しをしないといけないと思います。
それが終われば、これを通達として、高等学校にこうしてくださいと、公立については都道府県及び政令市の教育長、私立についてはそれを管理している都道府県知事に通達を出すわけです。ですから、できれば今週中に方針を決めて、金曜日が休みでございますけれども、木曜日付ぐらいでは何とか措置をして、これでちょうど十日ぐらいになると思うんです、この問題が出てから。できるだけスピード感を持って、不安を解消してやりたい。
そのためには、中身について言えば、両方が被害者ですから、今未履修の人をそのまま認めちゃったら、まじめにやっている学生に対して示しがつかないですね。しかし、余り筋張ったことを言って、今申し上げたように百四十時間も補習をしろなんて言ったら、受験どころじゃなくなっちゃうわけです。だから、その間のバランスをとって、ただし、バランスをとって卒業させるためには、卒業という一種の権限というのか、卒業した資格に関することですから、法制的な詰めをみんなきちっとしておきませんと、後々いろいろな問題が出てくると困りますので、まず、今回受験する生徒についてどうするかということ、今申し上げたような基本的な考え方で、できるだけ無理のないように、しかし不公平が生じないようにするということが一つですね。
それからもう一つは、既に推薦入学その他で入っている人もいるわけですよ、にせの調査書、内申書によって。今後、履修が追いつかないまま調査書、内申書を出して、推薦入学あるいは大学入試に臨む学生もいるわけですね。ですから、この人たちについてどう扱うかというのを大学当局にも通知しないといけないんですよ。
それから同時に、野田先生から、過去のものについてもという。これはもう膨大なことになりますので。ちょっと、当面の火を消さにゃなりませんのでしばらく御猶予をいただかないといけないんですが、過去の人たちについても、今のままでは、卒業資格がないまま卒業資格があると学校長に認定をされた前提で大学生になっておられるわけですよ。この方々の救済の通知も出さねばならない。
これをまとめて何とか今週中にやりたいと思っております。
○田島(一)委員
きのうの野田委員の質問にもお答えをいただいたのも私も聞かせていただきましたので、理解はするんですけれども、では、実際、この既卒者について、非常に膨大だと今大臣も御認識をいただいていることをお答えいただいたわけですけれども、既卒者に対しての調査、それと公表も含めて、調査をされたらの話なんですが、これもやはり時間をかけてでもきちっとやられるというふうにお考えをお持ちなのか。
それともう一つ、せっかくですから、この既卒者に対してはどのような形で未履修の部分を解決しようとするのか。基本的に不問とするのか、もしくは、もう一度、卒業されてからでも予備校みたいな形で学校が用意をして、その単位を履修することを勧めるような、そういう手だてをつくるのか。そのような方向等も、もしお考えがあったらお聞かせをいただきたいと思います。
○伊吹国務大臣
これは先生、今、火事の火が燃えているときに、一年前、二年前、三年前、四年前、五年前、六年前に近所で、あるいは自分のうちでぼやがあった、その原因はどうだと言っていたら、今の火事が消せないんですよ。ですから、それは大切なことはわかりますけれども。しかも、これを調べるということになると、十年前はどうだった、十五年前にも実はあったよなんて後で出てくると、また調査漏れだとかいっておしかりを受けるわけでしょう。それではやはり困るので、ある程度の年限までを決めてさかのぼって、まず当面の火を消したところで、現実的に過去の数字を調べさせていただいて。これはまた、学校に、公立高校に聞くには、都道府県の教育委員会と政令市の教育委員会を通じて聞くわけですね。それから、私立については都道府県知事を通じて調査をするということになりますから、これはかなりの時間と膨大な日数を要しますが、申し上げたように、その結果が出れば、これは理事会の御決定に従いますということをこの前申し上げているわけです。
そこで、既に卒業した方についてどうするかというのは、私はここで何度も御答弁しておりますから、先生が委員として聞いていただいているのなら何度も何度もの繰り返しになるんですが、御質問ですからもう一度申し上げます。
行政法の基本原則からいきますと、本人の瑕疵によらずして得た資格については、よほど大きな事実認定がない限りはその権利は認められるということなんですよ。だから、これがよほど大きな瑕疵に当たるかどうかということは、まさに今、当面の問題についての処理をどうするかということが法制的に詰められればそれでオーケーということであるのならば、重大な瑕疵に当たらないだろうという法制局的見解が出ると思うんです。
それが出ますれば、率直に言って今までの学校長の認定は間違っていたけれども、生徒に瑕疵はないからそのまま認めるという結論になるのではないかと、今のところまだ今の処理案そのものが最終的に固まっておりませんから、私は考えているんです。
○田島(一)委員
実は、私の出身母校も先週末に未履修があったということが発覚をいたしました。非常に不名誉なことであり、私は実は高校はもう十数年前に当然卒業しているわけなんですけれども、私のときはどうだっただろうかとついつい気になったところであります。恐らく、ひょっとしたら、ここにいらっしゃる委員の方でも、そのようなことで御心配をいただく先生方もいらっしゃるかもしれません。
別に完璧主義を貫こうとは思いません、しかしながら、このような形で、本来やらなければならなかった科目を勉強せずして私は卒業したんだ、そういう気持ちにさいなまれて卒業している人たちが随分この日本全国にいらっしゃるんじゃないかな。そう考えると、一定さかのぼって事実確認だけはやはり文部科学省としてされるべきではないかというふうに思うんですね。
瑕疵があるないは、もちろん、大臣がおっしゃったとおり生徒に何の責任もありません、被害者であります。私たちも、学校の先生にこの教科をやれと言われて勉強してきたわけですから、それを受けて、当然単位も取って卒業したと思っていたら、何だ、この単位はにせものかというふうに、皆さん、卒業生の方で未履修が発覚した高校卒業生は感じているんだと思うんですね。
そういった方々に対して、安心してくださいと言うだけではなく、実際事実はどのようになっていたのかを公表することは、私は、文部科学行政を預かる文部科学省として当然のことではないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。
〔斉藤(斗)委員長代理退席、委員長着席〕
○伊吹国務大臣
正規の、必修科目をとって卒業していたのかどうかと不安にさいなまれている人に調査をして、そうです、あなたの不安のとおりでしたと言えということですね、御質問の趣旨は。それは、調査をすれば結果的にそういうことになると思います。
○田島(一)委員
ではどうすればいいのかが、当然その次に来るんですよね。
例えば、履修しなかった世界史もしくは芸術科目などなどを、完璧に自分は履修をして名実ともに卒業単位を取って高校を卒業したとレッテルを与えられるような手だてというものは、例えば生涯学習という範疇ででも十分に対応できると私は思うんですね。そういった、とにかく大丈夫ですよと安心を与えるだけじゃない、さらにそこに加えて、足りなかった部分をこのようにしてフォローしていきましょうというのも、文部科学行政の一環の中でフォローアップしていくべきではないかというふうに考えて申し上げたわけであります。
今申し上げた、例えば芸術科目だとか保健体育、情報、家庭科という、言ってみれば受験に関係のない科目も高校の指導要領の普通教育科目の中には入っております。が、中には、こういう授業の単位を、時間を削って、いわゆる受験科目に集中させてきたという実態も実際出てきています。
こういったことも、もう一度、後でまたぽろぽろ出てきて私たちが突っ込むということを随分大臣も御心配のような発言をされましたけれども、事実は事実としてやはり認めていかなければならないし、それに対応する手だてをきちっと考えていくのも私は大事だと思いますので、ぜひその点、今後の対応策として十分な見解、そして先ほどおっしゃったようにスピードがやはり大事だと思います。不安で揺れ動く受験生の皆さんにも一定の理解と納得をしてもらえるような見解をぜひ導いていただきたいということをお願い申し上げて、この項の質問はこれで終わらせていただきたいと思います。
次に、教育改革のあり方という点で質問させていただきたいと思います。
先月二十一日に東大の基礎学力研究開発センターが調査をいたしました、全国の公立小中学校の三分の一に当たる一万八千校の校長を対象に実施した調査であります。ゆとり教育の見直し、それから教員免許の更新制や教育バウチャー制など、政治主導で目まぐるしく提案されてきている教育改革についての調査であります。
これの幾つかを紹介させていただきますと、小中学校の校長の約八五%が、今のこの教育改革が速過ぎて、速過ぎるというのは拙速の速という字でありますね、速過ぎて現場がついていけないと答えているのが八五%だということであります。中には、今回の政府提出の教育基本法の改正案に対しても六六%の小中学校の校長が反対をしている、そんな数字が出てきております。
大臣もこの調査結果はごらんになられたかというふうに思うわけでありますけれども、実際に現場の先生方は、教育改革自体が学校が直面している問題に対応していない、そう答えた人も七九%に上っています。現場の声として、私は非常に意義のある調査結果ではないかというふうに思うんですけれども、大臣はどのように受けとめて対応していこうというふうにお考えか、お答えいただけませんでしょうか。
○伊吹国務大臣
調査結果は、先生の御質問があるというので、私も取り寄せて見てみました。
世論調査は、いろいろ御経験があるからおわかりだと思いますが、聞く相手、質問によって違う答えが出てくるんですよ。ですから、例えばこれは学校の校長を相手にしておりますね。そして今、その校長先生が今回の未履修の問題の実は直接の責任者なんですよ。広く一般国民に世論調査をした経済広報センターというところの調査では、八割の方が義務教育の改革が必要だというお答えも出しておられるわけです。
例えば、基礎年金にかわるものとして、六万円までを保険料なしで上げますよという提案に賛成ですか反対ですかといったら、ほとんどの人は賛成すると思いますよ。しかし、そのための財源の議論に言及した質問をしたら、その答えは変わってくるでしょうね。やはり世論調査というのはそういうものだと思います。
先生の今御質問になっているのは、今議論をお願いしている教育基本法のもとでこれから行われるものじゃなくて、今までの現法律のもとで行われている改革が速過ぎるといって、ついていけない、こう言っているということですよね。やはり現場の管理者というのは非常につらいもので、改革ということに対してどうしても、私でも自分の身の回りのことはどうしてもやはり変えたくないんですね。
しかし、一番大切なことは、この問題は、納税者の負託にこたえているか、有権者の負託にこたえているかということを基本に考えていくのが、私は、現場の声ももちろん大切ですが、やはり原点じゃないんでしょうか。
○田島(一)委員
私は、その現場を預かっている小中学校の校長先生の答えだと思って、重きを置いて、きょうは質問に取り上げさせてもらったわけであります。
こうした調査だとかアンケートだとかの結果、すべて裏があるかもしれないと疑ってかかれば、私たちは何を手がかりにその根拠たるものを信じていいのか、いろいろと悩むところでもあるんですね。
私は、すべてこの結果全体が今おっしゃってくださったような全国民の意見を反映しているというふうに大げさに取り上げようと思っているわけではありません。ただ、改革の必要性は認識されながらも、やはり速過ぎるということに対しての意見として今お示しをしたわけであります。
改革は、当然スピードも大切であります。しかし、教育現場の直面する問題に対応していないという答えが出てきていることも、私はこれは一定、受けとめていくべきではないかと思ったわけであります。
例えば、今申し上げたこのアンケートの対象は公立の小学校、中学校の校長先生でありまして、未履修問題の対象である高校の先生は入っていません。ですから、同じように責任を問える立場ではないという前提に立ってお尋ねをしているわけなんですけれども、現場の声になかなか耳を傾けてくれていない、もしくは現場を見詰めてもらえていないという不安の声が校長から上がってきているということは、先ほど御答弁で大臣もおっしゃったように、直接的な人事権等々の権限がない文部科学省が県の教育委員会や市町村の教育委員会というフィルターを通じてでしか御存じないという現状を、私は問題点としてしっかり認識しなきゃならないんじゃないかと思うわけであります。
数字が多いから少ないからということを問題にしているわけではありません。現場の声が拾い上げられていない、現場がしっかり見られていないという現実の数字として出てきたものをお示ししたわけなんですが、いかがでしょう、大臣。
○伊吹国務大臣
現場を大切にしなければならないという御注意は、先生のおっしゃるとおりだと思います。ですから、文部科学省の職員にも、現場の声にさらに耳を傾けるようにということは私からもよく指導したいと思います。
ただ、一つ、例えば、この前福岡で大変悲しい事件がありましたね。その学校へ行くにも、もちろん痛ましい命を失われた御父兄にお目にかかるにも、やはり県のあるいは当該町の教育委員会と同席をしてでないと会えないんですよ、現在の法制は。あえて直接会いに行くということは、物理的に可能だと思いますよ。また、とらえ方によって、それを教育への中央の国家介入という御批判を意図的にされる方がおられますから。だから、法制上は非常にやはり慎重に扱っているということなんです。
だけれども、現場を大切にしなければいけないということは事実ですね。私も、選挙区なんかで、別に文部科学大臣とか国会議員という立場じゃなくて、母校なんかへ行ったりしますから、そのときに校長先生と話をすると、やはり先生の言っておられるような悩みを持っておられる小中学校の先生もいらっしゃいます。それで、これは、教育委員会が非常にうまくやっているところは、小学校、中学校、非常にうまくいくんですよ。ここら辺のあり方も、今後やはり法制的にも考えていく必要があるだろうと思います。
○田島(一)委員
ありがとうございます。
実は、先ほども例にとらせていただいた調査結果の中に、家庭での基本的なしつけであるとか教員の指導力不足というのについても問うている、そんな調査があります。この結果をちょっとひもときますと、やはり小中学校の校長先生方は、どちらかというと一般教員の方よりも家庭の問題に非常に厳しい目を向けていらっしゃるという結果が出ています。家庭の教育力といいますか、家庭での基本的なしつけが深刻に欠如しているとお答えになった先生方が九〇%、そして、特に家庭での教育力がない、そんな家庭が存在しているとお答えいただいているのも九〇%に上っています。
私、実は五年前に子供の小学校でPTA会長というのをやらせていただきました。PTAというのは、それこそ学校と家庭をつなぐ、そういう機能的な役割を果たしている存在だというふうに認識して、非常に忙しいながらもお役目を果たさせていただいた。一年間だったんですけれども。このPTAの総会というのを年一度やるんですね。しかし、その総会にすら出ていらっしゃらない保護者の方々がたくさんいらっしゃる。実際にPTAの総会に出ていらっしゃる御家庭の方、保護者というのは、もう家庭の教育力が十分についているような方ばかりが結局お越しになって、総会でいろいろな話を聞いてもらいたい、家庭でこういうふうに注意してもらいたい、そんなことを伝えたいなと思う人に限って御出席にならないんですね。授業参観なんかと抱き合わせたら出席率が上がるだろうかとか、いろいろと現場でも苦労をしてきました。授業参観にお越しになられたら、携帯のカメラをお子さんに向けて撮られる、○○ちゃん、こっちと言って、授業中ですよ。そういう実態からして、この小中学校の校長先生方九割が、家庭におけるしつけが深刻に欠如しているというふうにお答えになっているんだと思うんですね。
私、教育改革、確かに現場では、速過ぎるからついていけないという答えもありましたけれども、一番メスを入れなきゃいけないのは家庭教育じゃないかなと。恐らく大臣も官房長官も、皆さんお感じになっていらっしゃると思うんですけれども、残念ながら、この家庭教育の部分にどこまで踏み込めているのか、私は非常に疑問に思うわけであります。この後に、今回の教育基本法案の第十条で家庭教育という項目がありますから、そこでまた再度問いたいと思っているんですけれども、本来、例えば家庭でやらなければならない社会的な規範だとかしつけといったものが、今学校に対して、やたら過大な期待として押しつけられているという現状があります。
私、この間の文部科学委員会のときに大臣に、同じように、現場の先生が本当にしんどいということをお尋ねさせていただきました。これは何かといえば、教科の指導だけではなくて、しつけだとか、言ってみれば家庭教育でしっかりやらなきゃいけないことまで全部学校に押しつけられているという現状があるからだと思うんですね。
こうした現状も踏まえ、家庭教育が何よりも大事だという現場の先生方の声も上がっている、そのことを受けて、今、家庭教育のあり方というのが本当に問われていると思うんですが、大臣、どのようにお考えかをまずお聞かせいただきたいと思います。
○伊吹国務大臣
現状は、先生がおっしゃるとおりだと思います。
どちらかというと、従来日本がとってきた考えというのは、私たちの人間社会を生きていく知恵、安倍総理流に言えば規範意識、こういうものは、別に法律で決められているわけじゃなくて、親から子、子供から孫へ、代々家庭の中で引き継がれてきたものなんですね。だから、しつけあるいは日本社会に生きていく基本的なルールは家庭で教える、そして、地域社会でそれを温かくくるんでいく、そして、学校ではどちらかというとそういうしつけのようなものではなくて学力をつけさせる、これが日本の従来の考え方ですよ。だから、先生がおっしゃっているとおりの考え方なんですね。
ところが、先生がおっしゃっているように、しつけができるのに、何々ちゃんとか言って携帯で写したり、どこか遊びに行ってPTAに出てこないお父さん、お母さんもいると思います。しかし、社会の大きな流れとしましては、共働きになっちゃっているわけですよね。女性の方も社会に出ておられるわけです。そして、二人ともがPTAのときにそろっているかどうかということもありますし、また、子供が放課後家へ帰ってきたときに、勤めに出ている両親が家にいないというのは、これはもうほとんどの家庭の現実なんですよ。
ですから、学校の先生は、確かに、それを学校の先生に多くのことを期待し過ぎて、学校の先生を責め過ぎていると私は思いますよ、事実。しかし、同時に、学校の先生も、おれたちがやれないのは家庭の責任だ、家庭の責任だと言っても、現実の日本社会の家庭というのはどういう状態になっているかということもやはり考えなくちゃいけないですね。
だから、これは私は百年仕事だと思うんですけれども、家族の復権、地域社会の復権、こういうことを再生会議でぜひやってもらいたいと言っているのはそういうことなんですよ。ですから、家族の復権、地域社会の復権ということになりますと、三世代一緒に住める、地方での職業の、働きの場所がなければいかぬでしょう。それから、同時に、両親が早く帰ってくるためには労働法制の問題がありますね。家を続かせていこうと思えば、均分相続が適当かどうか、これは憲法にもかかわってくるわけですが、あるいは相続税の問題、その他いろいろなことにかかわってくるわけですね。だからこそ、私は再生会議があると思うんですよ。
でも、これをもとに戻すのには百年かかりますよ。やはり教育はそういう長い仕事だと思って、お互いに地域と教師と家庭が相手に責任を押しつけ合って相手を非難している、一番の被害者は子供なんですよ。そういうことにならないように、今の社会の状況を大きく変えられないけれども、放課後、子供を御両親のところへ帰れないときには預かる、御承知のように今予算措置を講じたり、いろいろなことをしているわけですね。だから、みんなで知恵を出し合って、相手に責任を転嫁するのではなくて、おのおのの場で何ができるか、子供のために何ができるかという気持ちでみんなで努力をしてみたいと思いますし、先生にもぜひ御協力をいただきたいと思います。
○田島(一)委員
答弁でそのようにまとめていただくとなかなか続かなくなってくるので、これも正直に申し上げますよ。私は、そういう意味では本当に大臣を尊敬しております。
ただ、私は、決して、文部科学委員会の中で先生の高説を聞かせていただくだけですべてこの今の教育が抱える課題が解決できるんだったら本当に言うことないんですけれども、ただ、百年もやはり待っていられない、これも現実であります。当然、時間がかかることも理解はするものの、現実、今起こっている現場の課題、そして、先ほどおっしゃったように、学校の先生が、では今度は家庭が責任があるといってなすり合うような、それもまた解決策には何一つつながらないということもあります。
だからこそ、多分、今回、政府案としてこの教育基本法案の中に、第十条、家庭教育という項目を設けられたんだと思います。この条文をひもといても、いずれも強制ではなく、努めるものであるという中身でありますから、当然それぞれの国民に呼びかけるにとどまっているわけなんですけれども、果たしてこの十条の家庭教育の項目で、保護者、そして家庭における教育やしつけというものが子供たちの人格形成の根本であるというふうに自覚して、実施、実践させることが本当にできていくのかどうか。やはりもう少し具体的な部分にまで踏み込み、イメージを国民にしっかりとわかっていただけるような、そういう取り組みが必要ではないかというふうに思うわけでありますが、この十条の中身について、そしてまたこの条文について、大臣としてどのような思いでこのような文章をおつくりになられたのか、お答えをいただきたいと思います。
○伊吹国務大臣
先ほど来私が申し上げているように、大変難しい社会状況の変化がございますけれども、一義的にはやはり保護者が子育てに対する責任を負うということを明記しているわけですね。そして、十条一項では、保護者の子供の教育について、その一義的責任をしっかりとそこへ書いている。その責任を支援していくために、国や地方公共団体による家庭教育の施策が必要だ。
だから、従来ですと、家庭教育を若いお父さん、お母さんに教えるのは、同居をしていたおじいさん、おばあさんなんですよ。ところが、核家族になっているから、それがもう全く途切れちゃっているわけですね。だから、地域社会でそれをどういうふうに補っていくかという、今いろいろな予算措置を講じておりますね。
それと同時に、例えば、児童の家庭教育手帳をつくって配付しているとか、あるいは家庭教育に関する学習会をつくっているとか、情報はこういうやり方でいったらうまくいったとか、幼稚園だとか保育園のような子育ての拠点をつくって、しかも、幼稚園、保育園では学童保育だとか学童幼稚園のようなことをやって、つまり、かぎっ子の人を預かって、その間、家庭と同じような情操教育をしているわけですね。
そういうことを中心に、百年追いつかない間の現実的な手当てをやっているということです。
○田島(一)委員
具体的な施策を今ひもといていただきましたけれども、例えば、手帳を配付したり、そしてまた学習会を実施されていると言うけれども、実際にその評価というものが何一つ成果として上がってきていないのも現実なんですね。やられていることは事実として受けとめています。しかしながら、先ほど私どものPTA総会の話も引用したように、やはり学習会にまず来てくださらないということに問題を置かなきゃいけないと思うんですね。やることは悪くないですよ。ですけれども、それが実際に家庭教育の充実に成果として上がっていない、ここにやはり問題があるんだと私は思うんです。
おっしゃったように、共働き、そして女性の社会進出に伴って、家庭教育が充実、充足できない、そんな御家庭が本当にふえてきたのも事実でありましょう。授業参観だって、それこそ平日に出てこいと言ったって無理ですから、私たちなんかは、土曜日に授業参観をするようにと、学校側と協力し合って、振りかえ授業をやってもらったり、そのような工夫も当然現場ではやってきているんですね。にもかかわらず、関心を持っていただけない。
これは、やはり家庭教育をこの十条だけで当然充足できるものではないと思いますし、今学校が担っている子供たちのしつけであるとか、教育のジャンルでいえば道徳ですね、この道徳の科目の部分を家庭にしっかりと認識していただく。もっと乱暴な言い方かもしれませんが、道徳の授業というのをやめて、もう家庭に全部任せてしまうぐらいのことをやらないと、百年たっても変わらないんじゃないかとさえ私は思うんですよ。
ちょっと乱暴な発言をして大変物議を醸すかもしれませんけれども、実際に、学校自体のこの現場の苦労と、そして家庭の教育の現状を考えたとき、例えば学習指導要領にある道徳は、もうこれは家庭教育でやるべきものだと思いますというぐらいの方針をお示しいただいてもいいんじゃないかというふうに思うんですが、大臣、どうでしょう。
○伊吹国務大臣
先生、どうなんでしょう。PTAの会合に振りかえ授業をやってお誘いしても出てこられない、そして、出てこられたら携帯で何々ちゃんと言って写真を撮るお父さんとお母さんに、道徳教育、しつけをすべて任せるということはできるんでしょうか。だから、我々がやっていることにほとんどの人が出てこない。やることはいいけれども、効果が上がっていない。先生は、どうしたらできると思われますか。
つまり、戦後、小学校から義務教育を初めて受けた人が今七十近くになっているんですよ。(発言する者あり)七十近くと申し上げておるんですが。それで、その方が子供を産み育て、そして産み育てられた子供がまた子供を産み育て、そしてその子供がまた子供を産んで、今小学校になっているわけですね。そして同時に、先生方も、その方に教えてもらった方にまた教えてもらって、また教えてもらって、また教えてもらった先生がやはり今先生になっておられるわけです。
だから、教育というのは即効性が出ませんので、文部科学大臣というのは余り得な役割じゃないんですよ。しかし、必要な役割なんですよ。ですから、その点を御認識いただいて、やはりこの教育基本法もそろそろ、先ほど保利先生がおっしゃったように、耐用期間が過ぎているんじゃないかという認識があるから民主党さんも我々も法案を出しているわけですから、ここで建設的な意見をまとめて、早く児童を救ってやるというのが我々の役割じゃないでしょうか。
○田島(一)委員
子供たちを救っていきたい、この気持ちに全く異論はありません。
先ほど、どうすればいいのかというふうにお問いかけもいただいたので、僣越ではありますけれども、例えばという、事例としてぜひ聞いていただきたいと思います。
私、道徳という授業、随分私も小学校のころから記憶に残っている、言ってみれば、人の痛みをわかることであるとか、人として人とのつき合い方などをしっかり教えていただく貴重な授業だったというふうに思います。
小学校や中学校ではしっかりと教育指導要領の中に道徳というものが盛り込まれているんですが、残念ながら、親としての教育、親としてどのように子供たちをしつけ、そして家庭教育を進めていけばいいかということは、この道徳なりの授業では何一つ出てきていません。
また、これを言えば学校に押しつけるのかというふうに言われるかもしれませんが、今、現実、大人、親に一番近い年齢といえば、この教育の中でいえば高等学校であります。高等学校の授業の中に道徳という授業はありますか。ありません。高校のときに、例えば道徳という科目ででも、子供を持つということ、親になるということをもし教育する時間でもあれば、もっと親としての自覚を持った、そういう保護者がふえていくのではないかと一案として思うわけであります。
その別、もう一方では、教育指導要領とは教育現場の先生方向けの指導要領でありますが、家庭教育の指導要領というものがありません。道徳という科目がいいのかは別にして、子供を持つならば、母子手帳というものを持ちますが、母子手帳には子供の教育について深掘りはなかなかされていません。今、手帳を交付されている、学習会を開催されているというお話がありましたけれども、子供に対して家庭教育の指導要領といったものをおつくりになるということも検討できるのではないかというふうに思うわけであります。
いろいろな方法が多分考えられるんですが、なかなか具体的に進められていない、それを学ぶ機会というのも個人の自由というか自発性に任せられているところがありますから、深掘りできていない、関心のある人しか来ないという現状だと思うんですね。
素人発想ですけれどもこういうやり方を私などは考えるわけなんですけれども、大臣、いかがでしょう。
○伊吹国務大臣
学校の指導要領を小学校からずっと追っていきますと、小中では道徳ということに言及して指導要領はつくられているんですよ。高等学校になると、公民の中でいわゆる社会人としての規範のような教え方に変わってきている、指導要領の書き方が。
ですから、今先生がおっしゃった、家庭が大切だ、家庭教育が大切だと。私は、文部科学大臣という立場を離れれば、うちのしつけは先生とよく似ています、我が家の。家庭で厳しく子供をしつけています。しつけてきました。もう大人になりましたからね。しかし、義務教育については、あるいはその他の学校については、これは国会でお決めになった法律があるわけですよ。そして、法律の中で、国民の税金を入れながら、日本人として生きていく最低限の規範意識あるいは学力、安倍総理の言葉をかりれば、教えていくのが義務教育であり、さらに高校、大学といろいろな役割が規定されているわけです。ところが、家庭は、先生、やはりこれは法律で縛るべきものでは私はないと思いますよ。
というのは、いろいろな生き方がある人たちが集まっているのが家庭であって、私は先生の意見に個人的には価値観を同じくしていると思いますが、多分、民主党の中でいろいろな立場の方がおられますね、その方々と今の御意見をすり合わせて民主党案として出していただいたら、私たちも大変心強いのですが。
○田島(一)委員
あくまで前提として、私としてはということを申し上げました。ですから、当然、これが党の意見だとかという前提で申し上げたつもりはないので、誤解のないようにはぜひしていただきたいと思います。
できるだけこういう場で、いろいろな、こういう提案とかも含めて、聞く耳を持っていただけるということは大変ありがたいことだというふうに私は思います。これからも遠慮せずに、できるだけ私自身も調査研究をして、この家庭教育のあり方というところはもっともっと深掘りをしていきたいというふうに思いますので、またぜひフランクな意見交換ができるようにお力をお貸しいただきたいと思います。
時間もあと十分となりましたので、教育委員会のあり方についての質問に移らせていただきたいと思います。
この未履修問題、そしていじめ問題を含めて、この教育委員会のあり方、当然、教育現場のあり方自体にも疑問を呈する声も随分上がってまいりました。
そんな中で、今回、教育再生会議の方でも、教育委員会の活性化であるとか、硬直化している教育委員会制度についての議論を進めていこうというような、そんな発言も委員の方から出てきたというふうに聞いています。その一方では、規制改革・民間開放推進会議からも、教育委員会制度が、硬直化した文部科学行政の上意下達システムとかつて批判をされていたのに、教育委員会の権限強化ということを佐田担当大臣がお答えになっていらっしゃいます。
それぞれ、この再生会議を御担当いただいている官房長官、また、きょうは佐田大臣にもぜひ聞きたかったのですけれども、何やら内閣委員会が重なっているそうなので田中室長にお越しいただいていると思います。それぞれ、この教育委員会の強化というものをどういうふうに進めていこうとお考えなのか、ぜひお答えをいただきたいと思います。
○塩崎国務大臣
いじめの問題、そしてまた未履修の問題をきっかけに、改めてこの教育委員会のあり方について議論が活発になっているわけでありますし、教育再生会議でも出ております。まだ一回しか正式な会合をやっておりませんのであれですけれども、そこで出た意見の中でも、やはりいじめの問題においても十分な役割を果たしていないんじゃないか、あるいは、国と地方との間での役割も果たしていないんじゃないかとか、やはりあり方が随分問われていることは事実でありまして、今後、いろいろな意見の方が集まっていただいておりますので、さまざまな議論が展開されてくるというふうに我々は思っています。
佐田大臣の御発言については、御本人から聞かないと私もよくわかりませんが、ここにおいても、これまでも長らくこの教育委員会のあり方について議論が重ねられてきたというふうに聞いておりまして、特区での扱いなどもこれまで出てきているわけでありますが、いずれにしても、これからさまざまな場でこの教育委員会の役割についてはさらに議論が深められるというふうに我々は思っています。
○田中(孝)政府参考人
お答え申し上げます。
規制改革・民間開放推進会議では、教育委員会の問題についてこれまでも審議をしてきました。去る七月に出されました中間答申におきまして、教育委員会をめぐる問題意識といたしまして、次のように報告書に書いてございます。現在の教育行政組織は、教育を受ける立場の学習者の期待や意見に対して明確な権限と責任に基づいて即応できる体制にない、すなわち学校長、市町村の首長、教育委員会並びに都道府県の首長及び教育委員会等が並列的、重畳的に存在し、学習者から見て権限と責任の所在があいまいになっているという問題意識がございます。
こうした現状を改善し、権限と責任を明確化するための方策の一つとして、規制改革・民間開放推進会議のこれまでの提言は、地方教育行政の実施に当たる市町村に教育のパフォーマンスを改善するための創意工夫を発揮する余地を開こうというものであり、これが教育委員会の必置規制の見直しや特区における取り組みの推進という提言につながっております。
しかしながら、いじめ問題の頻発を初め、教育現場の直面する課題を迅速に解決していくためには、地方の創意工夫のみに期待するのでなく、十分に機能を発揮していない教育委員会の改革に踏み込んだ検討が必要であるとの認識を佐田大臣は持っておられます。
規制改革・民間開放推進会議は、宮内議長が辞任され、去る十月十九日に草刈議長が選出されたところであります。佐田大臣と草刈議長との意見交換において、佐田大臣のこうしたお考えについて草刈議長も了解されたと伺っており、今後、推進会議においては、いじめ問題等、教育の現場におけるさまざまな問題に対し教育委員会がその役割を十分に果たしていけるよう、必要な検討が行われるものと考えてございます。
○田島(一)委員
発言された御本人、大臣がお越しいただけませんので、当然、その真意だとかはちょっとわからないんですけれども、これまでは、硬直化した上意下達システム、文部科学行政の上意下達システムを温存しているということで、教育委員会自体を、権限を首長に移そう、そういう動きでこれまで規制改革・推進会議の方は進んできていたんですね。設置義務ももう撤廃をしよう、そういう主張であったのが、どうしてここに来て、問題が大きくなってきたからといって、教育委員会の権限を強化しようというふうになったのか、この点、私は非常に疑問に思っているわけであります。
また機会があったときに大臣の方にぜひ直接お伺いをしたいというふうに思いますので、この点、また主張をお持ち帰りいただいて、御意向をぜひお尋ねしていただきたい、そんなふうにお願いをしたいと思っております。
もう時間もなくなってきましたが、最後、教育委員会の地方の現状というものをもう一度私は見て、ひもときたいと思うんですね。
今、教育委員会のそれこそ現場監督といいますか、教育長にどういう方々がなっていらっしゃるのかという点に注目を実はいたしました。大臣の方で御承知になっているのかどうか、ちょっと聞きたいんですけれども、今、全国の自治体にある教育委員会の教育長さんはもともとどういう出身の方なのかというのを把握されていますか。
○伊吹国務大臣
教育委員の中の一名を充てている、教育長についての御質問ですね、これはほとんどが、やはり学校現場というか、教員の経験者、あるいは教員の中から選ばれて教育委員会事務局という官僚機構の中へ入って、その中で栄進をきわめた人というのが現実だろうと思いますね。
○田島(一)委員
私、一度大臣から御指示なさって、この現状をぜひ見ていただきたいと思うんです。
教育の現場出身者がどれほど多いのか。実は、私の地元滋賀県の二十六の市町村の教育委員会を調べました。そうしたら、二人だけ、現場のOB、OG以外の教育長さんがいらっしゃるんですね。それ以外の二十四人は、結局元校長先生という方々がなっていらっしゃいます。
今回、例えばいじめの問題、現場であったかなかったかが、現場の校長が発言したことが教育委員会に行って、またそれがいじめの事実はなかったというような揺り戻しが、教育委員会と現場の学校との間で、やりとりの中で発言が二転三転してきたという事実を考えたとき、私は、その教育長も現場の学校のOB、OGであるということから、言葉は悪いですけれども、結局、結託していたんじゃないかと。
きのう、大臣も答弁で、学校現場の報告に教育委員会が、教育長がだまされたということをいみじくもおっしゃいました。なぜだまされるのかというよりも、もともとわかっていたんじゃないのか、仲間内だからということで、教育界全体が結局ぐるになっていたんじゃないかとすら思えてしまう結果が出てきているが、これは、教育長という主たるリーダーが結局現場のOB、OGであるから、癒着構造のようなものが歴然と残りつつあったのではないかというふうに私は思うわけであります。
どうして民間の教育長なんかがもっともっと出てこれないのか。当然、現場をよく知っているという点では、大臣がおっしゃるように経験者は非常に有能だと思います。が、結局は、現場に力を入れ過ぎる余り、現場を知り過ぎる余り、このような隠ぺい体質がどんどんどんどん温存され続けてきたのではないかと思うんですが、大臣、いかがでしょう。
○伊吹国務大臣
だまされたのか、だまされたふりをしたのか、その辺はよくわかりませんが、先生がおっしゃっていたような構造があることは私はよく理解しております。
それと同時に、教育委員会は、先生も御承知のとおり、今は執行機関として位置づけられているんですよ。しかし、執行機関の中の事務局長的役割を果たしているのは教育長ですね。そして、その上の取締役会に当たると言ってもいいと思いますが、これが教育委員であって、取締役会長が教育委員長なんですよ。
ところが、この教育委員と教育委員長という方が、事務局長というか社長執行役員というんですか、教育長をどれだけ監督し、チェックしているかということ、これにもう一つ問題がありますね。この人たちがどういう人たちなのかというと……(発言する者あり)今、不規則な御発言がありましたが、非常勤であり、大体名士の方であり、週一回あるかないかの会合に出てきておられるというのが現実なんですよ。
だから、教育委員会の強化というのも、みんなお題目のようにこれを唱えますが、どういう形で強化をしていくのかというもう少し具体論に入っていく、そして同時に、国の関与をどこまで認めるのか、それから、地方の首長に移すなんてことは、失礼だけれども民主党案のようにしたら、私が申し上げているように、これは必ず政治介入を招くことになります。
ですから、その辺のやはり歯どめを考えながら、どういうふうに強化していくかという具体論を、今先生がおっしゃった現実に即して、教育委員というのはどんな選ばれ方をして、どれぐらいの会議をしているのか、教育長というのは、先生がおっしゃったように、ほとんど現場となれ合う人たちの中から選ばれているという実態がいいのかどうなのかを含めて議論しないといけないと思います。
○田島(一)委員
時間も参りました。私自身は、この教育委員会のあり方自体、民主党としてはもう教育委員会は廃止すべきだという前提に当然立っております。今、なれ合いが、こうしていろいろないじめの問題だとか未履修だとか、こういう問題を引き起こしてきたのではないかという前提に私は立たせてもらっております。
教育委員会のあり方を議論していくことは私は全く大賛成でありますが、ただ、船頭が多過ぎて、規制改革会議ででもやっちゃうわ、また再生会議ででもやる、そして文科省は文科省で中教審ででもやっている。船頭が多過ぎることによって、結局また困るのは現場だと思うんですね。この現状もやはりしっかりと踏まえていただくことをぜひお願いしたいというふうにも思いますし、あと、問題点はまだまだやはり現場に必ずあるということ、ぜひこれを御認識いただいて、これからまた議論を深掘りしていきたいと思います。
ありがとうございました。
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